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追悼 〜 please play it loud

b0075025_2042362.jpgこのところ、あるものをずっと探していた。先日、それをやっと発見。押し入れの中から、古い財布に入ったチケットの半券の束。その中に「RC Succession / please play it loud」と書かれた一枚のチケット。でも日付が無い。調べたら81年の6月4日、場所は札幌市民会館 ──。

ちょうど、アルバム「Please」の発売直後のツアーの一日。数日間の耳鳴りと、叫び疲れて潰れた声。その夜、地方都市に育った高校生の人生を狂わせてしまうには、彼と彼のバンドが放出したエネルギー量は充分過ぎるくらい圧倒的だった。その後も、日比谷野音、武道館──と、彼と彼のバンドの演奏を何度も聴きに行ったけれど、後にも先にもあんな体験は無かった。思えば、他の多くの同世代の人々と同じように、間違いなく私も彼に人生を変えられたひとりだった。

それから数年が経って、幸運にもその彼と出会うチャンスに恵まれた。ステージで観る彼とは全然違った、包み込むような柔らかな物腰。その時に彼が掛けてくれた言葉は、一生の宝物。その言葉を胸に、今も音楽を続けている。その時から、またいつかお会いできる日が来ると思っていたけれど、思い出す度に、今となってはそれだけでも奇蹟のような体験だったと感じている。

「シングル・マン」は、LP、CD、オーディオデータと、時代と共に形が変わっても、変わらずフェイバリットな一枚であり続けている。Otis Redding、Sam Cooke、Wilson Pickett、Sam & Dave ── "ソウル・マン"に捧げられたナンバー「Sweet Soul Music」を歌う前にMCで紹介していたミュージシャン達。それをきっかけにレコードを聴き漁り、ブラックミュージックの世界への扉を開いてもらった。「The Timers」のタブー無き反骨精神、何ものにも媚びない姿勢、そして類い稀なるユーモアのセンス ── 、彼について語り始めると、堰を切ったようにあれもこれもと浮かんでくる。

大人になると周りを気にして、本当に悲しい時も大声で泣く事もできないのか──そんな自分がたまらなく嫌だった。表面を取り繕った、どこかで人の評価を気にするような文章をこんなブログなんかに書いて、いったい何になるのか──。日常の慌ただしさに埋没して行く喪失感。彼の死については、どうやっても言葉にはならなかった。それでもひと言残さずにはいられない。青山葬儀所へも行って来た。深夜、ひとり彼の音楽を聴き、彼の映像を眺めていると、信じられない位の涙が溢れ出て、改めて自分の中での彼の存在の大きさを思い知らされた。彼の声と言葉は、私を含め全ての人々の孤独な魂を震わせ、こう思わせてくれる魔法だった 〜 君が僕を知ってる 〜 だからひとりぼっちじゃない──と。

5月も終わりになった今、遅ればせながらやっと文章にしてみようと思って挑戦してみたけれど、なかなかこんな気持ち、上手く言えるものじゃなかった。そうだ、そんな言葉ではどうしても表現できない感情を伝える手段が音楽じゃないか──。それも、彼から教わった大切な事のひとつだ。
by hiro_c5884 | 2009-05-31 21:00 | Comments(0)