いやー、寒かったな。仕事中にラジオからDonny Hathawayの「Someday We'll All Be Free」が流れた。いやぁ、この暖かいエレピの音色と声。寒い夜には染みる音。でも何か物足りない。アルバムの中のこの曲には長いオーケストレーションによるイントロがあって、そこから景色がぱぁっと開けるように曲が始まるんだ。なんでセットで聴かせてくれないんだよぉ〜って、ラジオ局にそんな事言ってもしょうがない。で、帰宅後にアナログ盤を久々に引っぱり出してきて聴いてみた。
「Donny Hathaway ~ Extension Of A Man」
73年発表。日本盤のタイトルは「愛と自由を求めて」。このアルバムをDonnyの最高傑作と呼ぶ人も多し。(個人的には『Live』『Roberta Flack & Donny Hathaway』も捨てがたく、その辺りはまた今度...)Spike Leeが映画「Malcolm X」の中で、Aretha Franklinが歌う「Someday We'll All Be Free」を使ったのも象徴的な、公民権運動の嵐が吹き荒れていた時代の音楽。
インテリで有名な彼らしく( Washington D.C.にある黒人大学の名門 Howard University Department of Musicで奨学金を受けながらも中退)インナースリーヴには、彼自身による曲の解説が書いてある。これがなかなか面白い。例の一曲目の彼のペンによるオーケストレーション作品にしたって、ペンタトニックスケールのメジャーとマイナーがどうたらこうたらとか(英文読解能力に難あり...w)他にも、Dubussy、Ravel、Satieの名前が出てきたりして興味は尽きない。でも実際は本人も書いてる通り、George Gershwinの影響が大。そんなサウンド。
この「Extension Of A Man」ってタイトルも考えてみれば凄いな。何て訳したらいい?う〜ん...人類の拡張??これ、サイケデリックなイメージというよりは、彼の考える理想というかユートピア的な発想なのか...。
彼の歌声は、良くも悪くも、いわゆる「Funky」な感じがあまりしない。とっても生真面目で誠実。そんな彼が、あの時代のショービジネスの世界で、理想と現実のギャップに苦しんだ事を想像するのは容易い。そんな"光"と"影"の危ういバランスが、彼のたまらない魅力でもあったりする。音楽ってぇのは不思議なもんだ。
「Someday We'll All Be Free」うん、いい曲だな。30数年という時間が経過しても色褪せる事が無い。いろいろ考えさせられてしまう曲ではあるが...。